愛猫スズメ、愛称チュっちゃん。
享年14年。
死亡原因IBD.
私達の失敗 ・ 粉ミルクでの授乳
ここでは私たちが牛乳での授乳に決定した際の失敗談を記します。
反省はたくさんありますが、何より私が信じていたはずの方法をあせりから変更してしまったことに問題があったと感じます。
牛乳での授乳きっかけ

-1983年
はじめて目の開いていない赤ん坊チャトラ猫1匹の保護を体験。
猫の育児書には「脂肪など成分が牛乳と違う、牛乳は脂肪が少なく薄すぎる。牛乳に含まれる乳糖が猫は分解できない。ペット用ミルクにすべき。」とあったため、急いでショップにて哺乳瓶や粉ミルクをそろえた。

翌日下痢がはじまる。
1日迷い近くの獣医さんにかけこみ偶然松原先生と出会う。 私の持参の粉ミルクを見て先生は
「健康に生きてほしいならすぐにペット用をやめて、人も飲める安全な生の牛乳を常温で何も加えず与えなさい。」と言われる。

理由は
人も飲める生の乳であること
・ペット用には法がないに等しく危険(ペット産業の生産は危険が多いこと)。
・生き残った数(%)を公表していないのはおかしい。
・生き残った個体の弱さと障害。
・赤ん坊は乳糖が分解できる(脳の発育に不可欠)
・粉は溶かしても粉であること(失われた水分こそ必要)(粉は小さい粒の固形物である)
・粉ミルクは牛乳を加工してある。 ならば加工前の生の牛乳はより安全。
・作るたびに濃度が変わることは赤ちゃんの体の負担になる。
・下痢になる理由のひとつは腸内菌のバランスがとれないからであり、牛乳はそれをおぎなうことができる。

常温以下の温度にすること
・温めたミルクは胃の中で脂肪とタンパクが分離して消化の負担になる。
・親の乳房の位置で乳の温度が推測できる。 体の外についてるなら外気温と同じ。
・体が十分にあたたまっていれば冷たいものをほしくなりたくさん飲む。

濃度は牛乳で良い
・足りない栄養分はたくさん飲むことでおぎなえる。
・水分を多く摂取でき、尿が透明できれいになる(血液サラサラ)
・生存率が高い。
・他栄養分を添加するほうが危険。

下痢止めなど薬は飲ませない。処方しない訳
・赤ちゃんは離乳まで乳以外を(薬も)消化できない、体調を整えることが何より大切。
・下痢を悪いとは簡単には言えない、悪い物を外へ「便」という形で出しているため応援するケアをする。
・獣医学の本に書いてあることよりも経験を信じること。

松原先生の所へおとずれる赤ちゃんで脱水している子は皆粉ミルクであり、下痢はまぬがれず死亡しやすいという経験がたくさんある。
また先生は対処療法よりも日頃のケアを重要視する方だ。

余談だが、その日から先住猫のキャットフードも禁止される。
「毎日手作りしなさい。あなたが食べられる食材で作りなさい。肉食獣には生の肉をメインで食べさせなさい。
若いあなたは今この子達に手作りできないならば、いつか自分の子供にもベビーフードやカップラーメンを食べさせる人になるでしょう。
時間がないなら猫といっしょに毎日毎食ちくわを食べて猫と同じ病気になって猫の気持ちを知りなさい。
人が食べられない物を小さい生き物が食べて健康に育つはずはない。
本当に安全ならば人も食べられるはず。
そしてペット産業が獣医にもたらす利益は莫大なのだ、信じてはいけない。」

大きな企業の研究データをもとに整った栄養バランスを与えることが愛情だと思っていた私は驚いたのだが、松原先生は自信に満ちて数々の体験を聞かせてくれた。
たしかにペットフードはまずい、しょっぱい、胸焼けがする。
松原先生を信じることにする。

愛猫チュっちゃんは成分無調整のふつうの牛乳をそのままたくさん飲み、下痢が止まり、身体が弱いながらも健康に14年を生きた。

その後、毎年偶然 赤ちゃん猫を保護することが重なる。
その数は1度に3匹であったり5匹であったりするし、牛乳で皆健康に育つからもらい手探しがたいへんだった。
それは私が松原先生から遠くの町へ引っ越しても続いたが、ワクチン接種まで問題なく育つのでほとんど獣医にはかからなかった。
その間も粉ミルクと牛乳のことは、時々獣医にも人医者にも聞いたりした。
皆一様にペットミルクをすすめたが、無視することにしていた。






















そして、1993年。

A-B-赤く血のしたたるへその緒と胎盤のついた猫の赤ちゃん達の保護。
(左の写真を参照)
5匹全てに胎盤がついていた。
その様子からお母さん猫はへその緒を噛み切っていない、胎盤を食べていない、「初乳を飲んでいないかもしれない」と判断。
皆白い猫だったので、尻尾の先に1本から5本の線を引き,区別することに。

初乳から全てを人工保育、母乳がゼロ、これははじめてだった。乳母もみつからない。
何時間その場所に放置されていたかもわからない。
久しぶりの動揺から近くの獣医さんに相談してしまったのが失敗のはじまり。
胎盤は獣医さんでとってもらった。
しかし牛乳のことを話すと 「昔とは違い今のミルクはとてもいいですよ、これならぜったいに安心だから」
とすすめられて買った猫用プレミアム粉ミルクを与えることにする。

実はその時、点滴も勧められたが、流石に「それは無理でしょう」と断った。
入院させるつもりはまったくなかった。

自宅で保温の準備、体重を計り、当初猫達は健康そうだったから心は余裕だった。

C-なぜか翌日から下痢がはじまる。しっぽまでがびがび。
兄弟皆にこすれて異臭がした。

獣医へ、消毒と下痢止めをもらう。
「下痢をきれいに洗うように、何度でもきれいに洗うように」と言われるが、ちょっと変だなと少し思う。

D-ミルクに下痢止めをまぜても下痢は止まらず、しっぽはがびがび。

ミルクを飲む量が5匹で極端に違うと気づく。
1、2、3、4、5として1がたくさん飲む、5は飲まない。
1は一番体重がある、2・3・4で5が一番ひ弱で軽かった。
1、2、3、4、5皆ミルクをほしがり泣く。
5匹とも叫ぶような泣き方になってくる。
私の手のひらをまさぐる、しかし哺乳瓶をいやがる。
哺乳瓶を買いあさりいろいろ試すが変化なし。
吸う力がないのか、乳首が悪いのかとも考える。

E-今までの経験した子猫とは極端に泣き方が違うため判断にこまり、いろいろ試す。
赤ちゃんは声を潜めるものだ、緊急以外には声を出さない.。
写真は私の口に吸い付いているところ。
他私の乳首にもあてがい勢いよく吸い付くのでそこへミルクを流してみたりもした。
ミルクが流れると吸い付きをやめてしまう。
ミルクがなければ力いっぱい吸うので、くちびると乳首が血豆だらけになってしまった。
それほど吸う力はあったということだ。

そして1が死亡。
たくさん飲み大きいのになぜ死ぬのか獣医さんも答えが出ない。
「自然の摂理で数多く生むのだしかたない」
それもあるかもしれないが何かがおかしい、納得できない。
はじめての赤ちゃんアクシデントに戸惑うが、迷っている時間はなかった。
とにかく吸わせなければいけない。

2がミルクを吐きながら死亡。
5匹のうち2匹が死亡ということは単純計算全体の40%が死亡となる。
しかも大きな個体でミルクを吸う子から死んでいく。
これはおかしい。

他の獣医さんへ電話相談する。
この獣医さんは私が毎年赤ちゃんを育てているのを知っている先生。
しかし、先生は不在で奥様が応対してくれた。
事情を説明すると 
「判断はあなたのほうが正しいかもしれないですよ、私達でさえあなたほどたくさん生かしてきてないから。いつも主人と不思議だと話していたのですよ」
この言葉で頭が醒める。

そして基本に返るべく数年ぶりに松原先生に電話する。
教えられたのはあの時と全く同じやりかただった。
牛乳を生のまま与える。夏なら冷蔵庫の温度でいいと。
「ここまでペットミルクを飲んでしまったから、今後何かしら体の外へ毒物が出るかもしれない。あせらず基本にかえって今まで生かした子に何をしたのか思い出しなさい。」
厳しくやさしくあたたかい口調は昔のままだった。

F-すごい勢いで牛乳を飲み、疲れて手の力も抜けてしまう。

G-3・4・5ともにおなかがぱんぱんになるまで飲み、赤ちゃんらしくくったりと眠る。
しかしすでにへその緒部分が炎症を起こしていたりする。
治癒する力が足りなくなっている。

翌日から体中ににきびのような出来物があらわれる。
4・5に数箇所確認。 3には出ない、松原先生に電話。
「出ている子は大丈夫、赤ちゃんは代謝が早い。 あっという間に昨日まで摂取していた毒物が表面に出てくる。 にきびの出ていない子に注意しなさい。」

3が死亡。
松原先生の指摘の通りだった。 3は下痢も止まっていた。

H-もう異常な声で泣き叫ぶこともない。
美味しく飲んで、安心して眠り成長する。

I-「にきび」は「白いかさぶた」になり落ち「赤いかさぶた」に、赤いかさぶたが何度も落ちるがなかなか完治しない。
J-かさぶたは何度もはがれて落ちてゆく。

KLM-かさぶたの中に何があったのかはわからない。
これを飲みたくなかったから、ペットミルクをいやがったのだと理解した。






N-大きくなった4と5。
結局、体は小さいけどかたくなにペットミルクを飲まなかった子達が助かった。
右の子の背中にはまだぽっかりかさぶたの跡がある。

O-右は1年先輩の人工飼育の猫。すっかり大人だ。(この子は小さく、吸い方が弱く、栄養障害を起こしそうになり一時カテーテルで胃へ直接入れるなどした。 斜頚もなくなり全く問題のない成猫になった。)

ある評判の良い獣医の話しでは「粉ミルクよりも牛乳と卵黄のやり方のほうが生存率は高い。うちの病院では70%の生存を可能にしている。」ということだ。
さて
松原先生の教えを守り、生牛乳のみならば90%以上の生存は残せる。
(ほんとうは99%と言いたいのだが)

亡くなった1・2・3の姿を今でも想う。

動物病院の保育器に入った小さな子を見つけると不思議になる。
なぜ人は教科書を信じてしまうのだろう。
なぜデータの数値に弱いのだろう。
成分など母体の摂取する食べ物で毎日でも変化する。
   
代謝しなければ栄養価は全く無意味だ。
薄くていい、代謝できる生の牛乳を与えたい。

松原先生 「頭で考えないで、心で見極めるのです。」

気づきのある時はいつも松原先生の言葉が聞こえる。
おかげでいくつもの命を救うことができ、私の心が救われている。
最後に
*これは私達の体験です。全てにはあてはまりません。
*人工ミルクの製造を否定するものではありません。
*牛乳は最終手段であり、まずは乳母を探します。
*牛乳を使った場合であっても他の原因で残念な結果を招くこともあります。
種類の選択間違い、排泄を促がす方法、保育箱の温度管理、授乳方法の間違い、乳首の選択間違い、ごえんせい肺炎、他。
参照 : ●猫赤ちゃん人口保育  ●猫赤ちゃん体重記録

*「犬猫は乳糖を全く分解できない」の意見は獣医学の教科書に書かれていますが根拠は全くありませんし、それを今だに信じている獣医が多いことはとても残念です。
参照:牛乳について
*人工保育に関しては万全の準備の上で望んでいただければ幸いです。
Tails  詠田