●ポピーのこと●





















































































2003 5月
生きている赤ちゃん
生徒2名RちゃんSちゃんが涙目でやってくる。
(この子達は飼育当番の学年の子ではありません。)

「大きな赤ちゃんと小さな赤ちゃんがころがっているの」
『先生は?』
「死んだら裏に埋めなさいって、でもまだ生きてるから綿を持ってきたけど、どうしたらいいかわからない」

手には小さなカゴとコットンとティッシュとハンカチがにぎられていました。

『生きているんだね、学校に電話してみようね』
学校に電話をしてみました。
生徒の話しをしてみました。
先生の意見ではやはり「亡くなるのはしかたがない」とのことです。

しかし、同じ亡くなるのでも最善をつくしたかどうかで、生徒への影響があるのではないかとお話ししました。

同じ町内の幼稚園のペットだった羊のメリーさんのことを話しました。
園長先生が「死亡は夜の10:05でした」と翌日に園児に話し、園内の御葬式をし、皆でお別れをしたこと。
ここまでを望むわけでもないけれど、同じ学校で飼うにあたってはどうすることが適切なのかを考えていただきたい旨を伝えました。

そしてなにより、子供たちはもう裏に穴を掘るのは以前亡くなった子が出てくるので怖くなっているので、できれば先生がいっしょに穴を掘り、生徒には手をあわせることを教えてあげてほしいとお話しました。

最後に今いるらしい赤ちゃんを見るために学校に入る許可をいただきました。

生徒たちと学校へ。
小屋には担当の先生が2人いましたが、生徒は先生には目もくれず地面を必死で探します。

「赤ちゃんがいない、ここに大きな子と、ここに小さな子がいたのにいない、いない」
先生たちは電話での内容を知らないらしく、不思議そうに小屋の掃除の作業をしていました。

「みぞにわらが入れてある・・・」
生徒はみぞにのったわらをどかします
「おばさん、赤ちゃんほら、小さい赤ちゃんだけ」
はじめての生きている赤ちゃんです。
手に取ると冷えきっていますし、土まみれではらうこともできません。
急いで私の肌着の中へ入れました。

先程電話で話した先生も小屋に来てくれました。
「どうして雄雌分けてあるのに赤ん坊ができるんだろうか?」

泣いている生徒は訴えます
「赤ちゃんが産まれても死んじゃうなら産まれたくないと思います」

先生は答えました。
「それはね、自然淘汰というものなのだよ」

生徒は私の顔を赤い顔で歯をくいしばり見ます。
『ごめんなさい、それは違うということを子供は直感でわかっています。
もう一度環境の見直しを・・』

現場を見まわし女の子グループに入っている男の子を探しました。
4匹中1匹にみごとな玉玉があり、先生3人に見ていただきました。

そして赤ちゃんの説明をしました。
『ウサギさんの育児放棄は環境が良くないことや雄がそばにいることから起きます。
この赤ちゃんはもうすっかり冷えています。しかもこんなに土まみれです。きっともうだめかと思います。どうするかを考えていただけないでしょうか?』

1-このまま小屋の土の中に置く
2-生徒のカゴに入れて生徒にまかせる
3-獣医さんにお願いする
4-私が引き取り世話をする

生徒の「おばさんがいい」の言葉で私がつれて帰ることにしました。(帰りぎわ、飼育当番の子が野球をしているので聞くと、大きな赤ちゃんは死んでいたのでひろい、裏へ埋めたと教えてもらいました)

生徒と電気あんかと箱とコットンを用意して、ほ乳ビンでミルクをあげると、ちゅくっとなめました。

「かわいい~、なめたよ、がんばれ赤ちゃん」
生徒の目がうれしそうに輝きます。
『生きたらいいね、でも99%だめだと覚悟してね、1%がんばるからね』
「うん、私達は明日この子の名前を決めて来ます!ありがとう」

この日21:30の授乳で少しほしそうに飲んでくれましたが、深夜12:15に亡くなりました。おじさんがお湯できれいに洗ってタオルでふいてくれました。

翌日、生徒が「ポピーちゃんにします」と名前を決めて来てくれました。
生徒に亡くなった時の様子をくわしく説明しました。
生徒からあずかっていたカゴにポピーちゃんの遺体を入れて庭の花を入れてもらいました。


ふたりと私がお店の自由ノートに書き込んだ今回の出来事です。

Rちゃん

ポピーちゃんを見つけた時だめかなと思った。
だけど、ピクピク動いていて先生に言うとしょうがないと言われた。
そしておばさんがミルクをやったらうごいたのでとてもうれしかった。
でもやっぱりよわっていて安心してしんでしまった。でもウサギ小屋でそのまましんでしまうよりはよかったと思ってくれるといいなと思った。

Sちゃん

はじめに見たとき2ひきいた。
でも1ぴきしかいなかった。名前をポピーちゃんにした。
見つけた時ポピーちゃんは動かなかったから死んじゃってると思った。
でもちょくちょく動いてくれた。うれしかった。
先生に言ったら「しょうがないね」と言われた。
そしておばさんのところに持っていってミルクをあげたら安心していた。
安心しすぎて死んでしまった。
かわいそうでした。

かわいいポピーちゃんだったね。
夜ミルクをあげたら「ぷきゅぷきゅ」って言ってすいつきました。おしっこも出ました。
インターネットで赤ちゃんのこといっぱい調べた。とても勉強になった。
K小のうさぎさんで名前をつけてもらったのはポピーちゃんがはじめてだね。
ほかの子にも名前がつくといいね。

2003 6月
ポピーちゃんへの手紙
ふたりが天国のポピーちゃんに手紙を書いてくれました。

   ポピーちゃんへ
ポピーちゃん今天国で幸せにしていますか?
最初ポピーちゃんを見つけた時は全然だめかと思ったけど、お店でミルクをのんでくれて、ホッひと安心。
次の日、Sちゃんといっしょに、「ポピー」という元気で、明るい名前をつけたよ。これから元気で育ってほしかったからね。
でも、お店に行ってみたらポピーちゃんは、小さな天使になって天国に行ってしまっていたね。私はかなしくて、鼻のおくが「ツーン」としたよ。でもポピーちゃんは、体が洗ってあってとってもキレイで、ねむっているみたいだったよ。
ポピーちゃん、そのままうさぎごやでどろまみれのまま死ななくてよかったね。最後にミルクをのんで、温かいところでねれて本当によかったね。
私、ポピーちゃんに会えて、少し命のことが分かった気がする。だからポピーちゃんに会えて本当によかったよ。          Rより

   ポピーちゃんへ
今、ポピーちゃんは幸せにしていますか?
「ポピー」という名前を考えたのは、私とRちゃんだよ。ポピーという花のように一生懸命生きてほしいと、明るく生きてほしくてこの名前をつけました。
はじめに見つけた時は、まだ動いていたので
「がんばれ、がんばれ」と思ったんだよ。
おばさんとおじさんがお世話をしてくれました。ミルクをくれたり、おしっこがでるようにコットンでお腹の下の部分をちょんちょんやったりしてくれたんだよ。
私はポピーちゃんをだいたよ。ピクピク動いていたよ。かわいい顔でした。
安心して死んじゃってびっくりしたよ。
でも、そのまま死んじゃったらいやだったでしょ?
幸せになってね。               Sより